リネンが好き
前田まゆみ著
文化出版局 刊
単行本: 95ページ
出版社: 文化出版局 (2002/06)
ISBN-10: 4579208196
ISBN-13: 978-4579208197
発売日: 2002年06月
寸法: 20.8 x 14.8 x 1.2 cm
リネンについて
mayumi maeda
リネンの扱い方
新品のリネンの布は、メーカーでの仕上げ方によって、手触りはいろいろ。
比較的固いものや、やわらか加工済みのも薄手のリネンは、水通しをせずに縫ってしまっても、縮みもほとんどなくそれほど影響はありませんが、無漂白(「生機=きばた」ともよばれます)のリネンは、フラックスのあくがまだあり、さらに洗うと10%近く縮むため、縫う前に必ず一度水通しをしてください。軽く洗剤をつけ、そっと手洗いをします。フラックスのあくが出て、水が茶色くなるのに、最初はビックリするかもしれません。その茶色は洗えば洗うほど薄くなります。何度か水で流し、また時間に余裕があれば、数時間からひと晩程度つけおいて、あくがほとんど出ない状態まで洗い流しましょう。そのあと、軽く手でしぼって、干します。
リネンは、生乾きのときにアイロンをかけると、ピシっとまっすぐになり、また、この段階で、リネン独特のたらんとした質感が現れます。
キッチンタオルなどの製品は、汚れを避けるため新品のときは糊をきかせ、リネン本来の吸水性がおさえられています。お使いになる前に、一度洗濯してください。
洗濯や実際に使う頻度にもよりますが、リネンは丈夫で、長く使えます。何度も使って洗濯をしているうち、最初のシャリ感はなくなり、やわらかで本当になめらかな肌触りになります。洗剤は、普通の洗剤でもまったく大丈夫で、洗濯機でジャブジャブ洗えます。
ただ、蛍光剤や増白剤の含まれている洗剤で洗うと、リネンに限らず何でも、繊維の傷みが強く、毛羽立ちも多くなります。けれど、ふだん使いのハウスリネンの場合、まったく蛍光剤や漂白剤の含まれない、また純石けんのような天然のものだけでは汚れを完全に落とせず、しばらくするとだんだん黄ばんできてしまう、という問題もあります。
ですから、ふだんは中性洗剤や純石けんなどを使って、3~4回に1回程度の割合で、蛍光・漂白剤の含まれている洗剤を使うようにすると、黄ばみも漂白でき、また繊維の傷みを最小限にとどめることができると思います。
リネンって、なに?
リネンという言葉は、きっとみなさんにもおなじみのことと思います。でも、厳密にそれは何?と聞かれると、なんとなくハッキリわからなくなってしまうような・・・わたしは、最初はそうでした。それで、本などで、いろいろ調べてみたのです。
リネンというのは、「麻」のこと。
ただ、ちょっとややこしいことには、日本語で「麻」と呼ばれる布には、実は原料になる植物がいろいろとあって、リネンはフラックスという草からとれる麻のことで、厳密には「亜麻」ということになります。
ほかの麻というと、たとえば、大麻(たいま)があります。最近見直されてひそかにブレイクした、英語でヘンプhempというのがそれで、日本や韓国の古来からの麻は、この大麻(たいま)なのです。武士の装束の裃(かみしも)は麻で出来ているというのは有名ですが、この場合も大麻。
ちなみに、この大麻は、あのマリフアナと近縁の植物です。
そのほか、黄麻(ジュート)、苧麻(ラミー)など、いろいろの麻がありますが、日本の通産省のお達しでは、製品に「麻100%」と表示が許されているのは、リネンとラミーだけ。ラミーは安価で丈夫ですが繊維が太く布の質も粗くて、麻袋などによく使われるもので、布地としてふつうにあるものは、リネンがほとんどです。
「麻はしわになる」というイメージがありますが、これは残念なことに、値段を安くするためにラミーを混ぜた麻が、そういう紙を折ったようなしわになりやすいのです。フラックスからとるリネンは、工程が複雑なのと、フラックスの育つ地域が限られているため、ラミーよりもかなり高価、ほとんどシルクと同じくらいの値段です。けれども、一度使ったことのある人ならみんなが知っているとおり、リネン100%ならやわらかなしわにはなるものの、「紙を折った」ようなしわには全くなりません。
また「ごわごわの麻」のイメージは、リネンではなく大麻・ヘンプの質感です。ヘンプはリネンよりもずっと固い繊維で、日本や韓国では、その固いまっすぐの美が愛でられました。ただ、ヨーロッパではあくまでもヘンプは、古代よりリネンの代替品という位置にあったようです。
リネン・その歴史とプロフィール
リネンの起源は、紀元前5000~6000年ごろのエジプトと言われ、人類が作ったもっとも古い繊維がリネンであると言われています。涼しくて夏の日の長い地方で育つのに適していたリネンは、その後ヨーロッパじゅうに広まり、おもに暮らしのもっともカジュアルな場面で、つねになくてはならない布になりました。ヨーロッパでは、女の子がお嫁に行くときに、イニシャルを刺繍した白いリネンをいっぱい持っていく、という習慣をご存知の方もきっと多いことでしょう。
畑のフラックス
乾燥したフラックスの束
現在フラックスをもっともたくさん作っているのはロシアですが、1ヘクタールあたりの効率や質のことを考えると、やっぱりフランスが世界1位だそうです。リネンといえば、フランス・・・そんなイメージは、そこからきているのかもしれません。
リネン糸:これを染めたり、そのままニットにしたり、織ったりします。
アイリッシュ・リネンのこと
アイルランドでリネン作りがさかんになったのは、宗教改革のころにさかのぼります。そのころ、新教徒に追われたフランダース地方(現在のベルギー北部)などの、旧教徒のリネン技術者が、大量にアイルランドに移民したのがそのきっかけだそうです。その後、アイルランドで上質のリネンが作られるようになりましたが、さらにそれが世界的に有名になったのは、アメリカ南北戦争の時。戦乱で、国内でコットンの生産ができなくなったアメリカは、コットンのかわりに、アイルランドからたくさんのリネンを輸入しました。その品質がとてもいいので、アイリッシュ・リネンはアメリカで大ブレイク。それ以来、アイリッシュ・リネンは、最高品質のリネンのひとつとして、メジャーになったのです。
ちなみに、リネンは国際的分業が進んでいて、アイルランドで織られるリネンの原料も、じつはほとんどがフランスの畑で収穫されたものを、ベルギーで繊維に加工したものなのだそう。逆に、農業国フランスには広大なフラックス畑があり、農作物としてのフラックスをたくさん作っているものの、布を織ったり、製品を作る産業というのはフランスの中では少なくて、その後の工程はほとんどベルギーやアイルランド、イタリアなどで行われているのです。
東欧のリネン
東ヨーロッパの国々でも、さまざまなリネンが作られています。LINNETで扱っているポーランドのリネンは、原料のフラックスからすべて、ポーランド国内で作られています。
リトアニア、そしてお隣の旧ソ連ベラルーシの近辺の地方は、フラックスとリネンの一大産地です。そこで作られるフラックスとリネンの量は、フランスとベルギーで作られる量に匹敵する東欧のリネン中心地といえます。
湾をはさんでお向かいがスカンデイナヴィア半島で近いため、北欧にはたくさんのリトアニアリネンが輸出されています。
リネンの魅力
コットンのように、安くて質感もやさしい、ほかの実用的な布が発見されてからも、リネンの人気が衰えない理由は、その独特のさらりとしてやわらかい質感の魅力にあると思います。
吸水性・速乾性がすぐれているリネンは、肌に触れるといつもさらりとしています。そして、洗濯機でふつうに洗える上、そうやって使っても長くもつという並はずれた丈夫さも持っています。そしてさらに、どんなに使っても毛羽立たないなめらかさ。また、繊維が比較的重いので、テレンと垂れる、ちょっとしどけないかんじ。
ナチュラルなのに上質感があって、エレガントなのにとても丈夫。こんな相反する美しい魅力を持ったリネンには、ときに、まるで恋に落ちたかのような熱狂的なファンがいて、まさに「リネン信奉者」と呼ぶのがふさわしいほどです。
膨大な情報があふれ、めまぐるしく流行が変わっていく時代。何もたしかなものはないような時代の中で、何十年も変わらないで、暮らしを引き立ててくれる美しいものが、そこにあるとしたら・・・わたしにとって、リネンとの出会いは、そんなおどろきの始まりでもありました。
たくさんの情報を追いかけるのに疲れたころ、ゆっくりと自分のペースで自分の時間を生きてみたくなったころ、自分にとって本当に大切なものは、ほんの少しのものだけだということがわかってきたころ。そんな、おとなの暮らしにとって、リネンは、すばらしいパートナーになってくれるのではないかと思います。
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