une jupe
6/26(月)〜 7/1(土)
Mariko Morimoto
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- 森本萬里子さんの
- 手縫いのスカートの展覧会
森本まりこさんのこと
まりこさんは、3人の子育てをすでに終えられた、わたしよりもひと世代以上年上の女性です。
まりこさんの作る、縫い物や編み物の手作りの作品に心を奪われてしまったわたし。
そして、春のはじめのお天気のいい日の午後に、まりこさんのお宅を訪ねました。
まりこさんのお宅は、40年も前からある静かな古い団地の一室・・・浜の匂いのする風に吹かれて、階段をのぼると、とてもシックな真鍮の取っ手のついたドアがあって、そのドアの向こうが、まりこさんの暮らしている場所でした。
まりこさんの作る作品を始めて見たときは、ほんとにびっくりしました。
何ていうのか、そのあまりの自由さに。既存のスタイルとか、ソーイングや編み物の堅苦しい方法論とか、そういうものから全く自由奔放に弾けています。
それで同時に可愛い。
一見した所では、20代前半くらいの女の子が作ったのかな、と思えるような屈託なく新しい感じのものなんですが、すでに立派な社会人になったお子さん達を持つ女性が作ったということにも、まず驚いてしまいました。
まりこさんが作品を作り始めたキッカケは、一人娘である愛さんが、パリで仕事をすることになって、単身渡仏してしまったことだそうです。
愛さんがいなくなってしまった空虚感を埋めるために、まりこさんは、手縫いで愛さんのためにお洋服を縫い始めて、仕上がっては送り、仕上がっては送りするようになったそう。それまでは、全く手作りをされたことがなかったということなのですが、作品はみるみるうちにいっぱいになって、愛さんが「ママ、わたしはもう十分、いっぱい愛情を貰ったから、今度はこの作品をみんなに見てもらったら?」と言って、パリで個展を企画して下さったのだそうです。
まりこさんがいつも手を動かしているという、日当りのいい窓辺には、小さな台に編み掛けの編み物が置いてありました。
まりこさんは、専業主婦です。若い頃から家庭に入りたくて、とにかくおうちの事が大好きで、暮らしを作るのが大好きだったそうなのです。
でも今は、精神的には、主婦という段階を超えて、一人のアーティストのような意識が自分の中に生まれているとおっしゃっています。
でも、今も大切にしているご主人との暮らしの中では、気持ちの切り替えもはっきりとさせています。ご主人が仕事に出かけている昼間、一人の世界に没頭してもの作りをして、夕方、ご主人が戻る時間が近づくと、頭を切り替えてきっぱりと仕事を終えるのだそうです。
作業中は、いろいろな生地や材料がいっぱいになって部屋の中がすごいことになるけれど、それを片付けるという行為もまた、好きだとおっしゃいます。
作品は全部手縫いです。
縫い目の一つ一つに、そのときの気持ちが思い出せたり、聞いていた音楽が思い出せたりするくらい、作っているときの気持ちが全部こもっているものになると、まりこさんはおっしゃいます。手で縫っているから、縫い目が思いがけない方向に行くこともあって、それはその時の気持ちなのだそうです。
絵を描いてるみたいですね。
糸の色にもこだわって、手縫いだからこそできる、まりこさん独特の縫い取りの仕方もあります。裏がえしてみても色んな工夫があって可愛いのですが、「裏も素敵だと、それが力になるから」とおっしゃいます。
「力」という事を、まりこさんはよく口にされるように思います。レース、ボタンなどのディテールをそこにつけるのは、それが「力を与えてくれるから」。
そうなのかも・・・わたしたしが、そこにレースとか、小さな花柄の布や、可愛いボタンが欲しくなるのは、それが小さな力になって、わたしたちの気持ちと暮らしを支えてくれるからなのかもしれません。
そんなことを、まりこさんとお話していて、発見することができました。というか、レースとかボタンのことを、そういうふうに考えてみたことなかったな。うーん、その視点、新鮮すぎ!!
6月にLINNETでする展示のタイトルは’une jupe'
jupeはフランス語で「スカート」。10点くらいの手縫いのスカートを展示する予定です。
「今日は、スカート!っていう、そんな日があるでしょ?」
そんな言葉を発している女性は、58歳。(ごめんなさい、年のことばかり言って)天真爛漫な少女は、いつまでも少女のまま。何歳であっても、子育てが終わっていても。
「少女」っていうのは、年齢の事ではなくて、ある一つの感受性を呼ぶ時の、別名だという気がしてきます。